2006年01月04日

大航海時代のキリスト教布教活動にみる日本への脅威

 新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。
 
 年末に、刀狩を終えて約250年もの間、平和となった江戸時代日韓併合前夜のつなぎの記事を書きたいと思う気持ちが湧いてきた。何故なら、当時、日本に脅威を与えた欧米勢力の時代背景の説明に抜けがあるので、混迷した日本の様相が伝わり難いと思ったからである。
 歴史教科書を読み返してもみたが、話が断片的なのでリアル感に欠ける。その理由は、”全「歴史教科書」を徹底検証する”で述べられていたような、豊臣秀吉の朝鮮出兵やキリシタン弾圧を感情的かつ針小棒大に非難する材料とでしか扱われず、逆に、ポルトガルやスペインのキリスト教布教と征服事業が両輪であったことにいち早く気付き然るべき処置を行った慧眼の持ち主である秀吉の功績を伏せていることに尽きると思う。
 そこで、今回は、時代が前後して申し訳ないが、スペイン、ポルトガルによるキリスト教布教などの大航海時代をテーマとしたい。歴史や宗教にはあまり詳しくないので大きな間違いがあればご指摘頂ければ幸いである。

 まず、スペイン、ポルトガルが位置するヨーロッパの周辺から説明させて頂くと、8世紀以降、地中海がほぼ全域にわたってキリスト教に敵対するイスラム勢力におさえられていた。
 13世紀になると元が中国に加え地中海付近まで勢力を伸ばしてきた。陸路の治安が向上したことと、商人が通過するたびに税を取っていた無数の関所もなくなったことから、アジアとの物流が活発になった。ヨーロッパ勢もこれにあやかりたかったのであろう。

・モンゴル帝国の版図
 世界史ミニ事典(付)・図表とコラム
mongoru.png

 しかし、13世紀末になると、地中海周辺にオスマン・トルコ帝国が成立し、ヨーロッパのキリスト教徒は、この地域を通過することができなかった。何故なら、この当時、イスラム勢力の方が、軍事(学問、芸術も)でヨーロッパ勢を圧倒していたからである。
 次に、ヨーロッパについて説明させて頂く。14世紀は、ペスト菌の大流行によって人口の1/3が失われるほどの暗い時代であった。
 ポルトガルとスペインが、やっとの思い出イスラム勢力を追い出し、国土を統一したのが15世紀頃である。肉食が増えていたが、肉の保存と味付けのためにアジアの香辛料が欠かせなかった。この香辛料はヨーロッパでは産出せず、同じ重さの金と交換されるほど貴重であった。
 しかし、ポルトガルやスペインには、アジアで売れるものがない、人口激減の影響が続いて労働力もない、金もないといった状態で、アジアと真っ当には取引できる状況ではなかった。

16世紀後半のアフリカ(大航海時代)
 世界史地図理解
afurica_16c.png

 このような背景のもと、ルネサンスのイタリアにて天文学や地理学の知識が増し、帆船や羅針盤が発達し遠洋航海が可能となり、大航海時代が到来した。これが、種子島への鉄砲伝来やイエズス会のキリスト教布教といったかたちで、後々の日本に影響を及ぼすこととなる。
 ちなみに、航海の途上で、到達したすべての陸地を、永久に領土とする許可が、以下のようにカトリックの本山であるローマ教皇庁から与えられている。

ポルトガルとスペインによる地球分割計画
 新しい歴史教科書
 ポルトガル国王は、アフリカの南端をまわって東回りでインドにいたる航海の途上で、到達したすべての陸地を、永久に領土とする許可を、カトリックの本山であるローマ教皇庁からあたえられた。いっぽう、スペイン国王も、コロンブスが北アメリカへの探検で功績をあげると、領有の承認をローマ教皇に求めた。
 1494年、大西洋を東西に分ける一本の線が引かれた。この線から東方で発見されるものはすべてポルトガル王に属し、西方で発見されるものはすべてスペイン王に属するという取り決めが両国のあいだで結ばれた(注2)。
 さらに、16世紀に入ると、東半球でも両国間の領土分割線が定められた。当時のヨーロッパ人は、まるでまんじゅうを二つに割るように地球を分割し、それを自分たちが進出する領土とみなしたのだった。
 注2、これをトルデシリャス条約という。

それでは、キリスト教布教と征服事業の両輪具合をご紹介させて頂く。

悲しいメキシコ人
 国際派日本人養成講座 平成9年9月20日
■2.自らの文化を失ったメキシコ人■
 メキシコ人はアメリカに土地を奪われ、今は経済的に従属しているが、さらにかわいそうなのは、固有の文化・文明そのものをスペイン人に破壊されてしまったという点である。彼らの話すスペイン語は、その文化・文明を滅ぼした侵略者の言葉である。彼らの固有の神話、文学、宗教もすべて失われ、文化的には二流のスペイン人となってしまっている。
 1521年まで、メキシコにはアステカ文明が栄えていたのだが、スペイン人コルテスの侵略に屈した後は、鉱山開発で過酷な労働を強いられ、天然痘などの流行もあって人口が激減した。さらにキリスト教宣教師が固有の宗教を破壊し、経済的にも教会が国の資産と土地の3分の1を占有した。人種の混合政策がとられ、スペイン人の血の濃さに従って、複雑な階層に分化した。こうした過程で、アステカ文明は根絶やしにされたのである。

 また明治大学の入江隆則教授は次のように述べている。

平和と環境保全のモデル社会-江戸
 国際派日本人養成講座 平成10年2月14日
 はやい話がスペイン人が現れる前には、中央アメリカの推定人口は7千万人から9千万人はいたとされているが、私がすでに書いたようにスペイン人の侵入のわずか一世紀後には、350万人に激減している。またこれも推定であるが、3千万人から6千万人に及ぶ黒人奴隷がアフリカからアメリカ大陸に連れ去られ、その三分の二が航海途上で死亡して、大西洋に捨てられたといわれている。こんなことは「近代世界システム」が始まる以前の、どんな時代にも起こってはいない。[1,p243]
(省略)
[参考]
1.「太平洋世界の復活(第10回) 鉄砲伝来とペリー来航」、入江隆則、VOICE 1995, 10月

 ヒト、モノ、カネがない上に売れるものがないヨーロッパ勢が、高価な香辛料を得るための手段は、上述のように、キリスト教布教の名の元に他国を侵略し、先住民族の奴隷売買や、銀山での労働力などとしての活用であった。このように当時は、力(暴力)が正義の時代であった。
 このような世界情勢を無視し、秀吉の朝鮮出兵を侵略と一方的に糾弾する自虐的な自国の教科書が学校教育で利用されることが残念でならない。

・朝鮮出兵を現在の価値観で裁断していないか
 全「歴史教科書」を徹底検証する
【東京書籍】朝鮮侵略(1ページ)
【大阪書籍】秀吉の朝鮮への侵略(1ページ)
【教育出版】秀吉の外交と朝鮮侵略(13行)
【日本書籍新社】秀吉が朝鮮を侵略する(1ページ)
【帝国書院】秀吉による朝鮮侵略(14行)「秀吉による朝鮮侵略」というキャプションの地図あり
【清水書院】秀吉の対外政策(コラム「秀吉の朝鮮侵略」)(1ページ)(省略)

※カッコ内は、朝鮮出兵に割いている分量

 さて、1521年からスペインによってフィリピンの植民地化が進み、この魔の手が、いよいよ日本にも及ぶようになってきた。この続きは、また後日述べたい。最後に、これまでの簡易年表を以下に記す(クリックにて拡大)。

daikoukaij.png

【関連記事】
・(H17.12.17)日韓併合前夜
・(H17.12.25)偉大なコリア教授のお話を聞け!
・(H18.01.14)大航海時代のキリスト教布教活動にみる日本への脅威
・(H18.02.13)秀吉の慧眼によって救われた大航海時代の危機

【参考書籍】
全「歴史教科書」を徹底検証する―教科書改善白書〈2006年版〉
小学館 [著] 三浦 朱門
ASIN:4093875847 /単行本/239頁
発売日:2005-06
ランキング&評価:---位 3.88
価格:¥ 1,260 [2006-06-16 Amache]
4 - 知らない人物多数
5 - まず、自分の眼で確認しなければ
5 - 扶桑社効果?
5 - 教科書問題は単独の問題ではありません
1 - 疑問を持つこと自体が疑問

新しい歴史教科書―市販本
扶桑社 [著] 藤岡 信勝
ASIN:4594050093 /単行本/238頁
発売日:2005-08
ランキング&評価:---位 4.07
価格:¥ 1,200 [2006-06-16 Amache]
5 - 近代的歴史学に沿った注目の書で、「○○史観」という穿った見方ではない
5 - 1/3が明治以降なのには驚いた
5 - 何故批判する?
5 - 侵略を肯定する本ではないと思いますが
3 - 巷で言われる程悪い教科書ではないが維新の元勲岩倉具視が明治天皇の父孝明天皇を毒殺と米

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 トスカ枢機卿補遺(3)
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Tracked: 2008-07-30 17:19
この記事へのコメント
とても面白かったです。
次のエントリーも期待してます!

頑張ってください
Posted by いーじす at 2006年01月06日 14:34
高麗がどうしてモンゴルの領土じゃないんだ?

高麗の王様も貴族も皆モンゴル人なのに
国だけ独立しているなんておかしいぞ
名前もモンゴル風に創氏改名していたのにな
Posted by at 2006年01月06日 15:01
>高麗がどうしてモンゴルの領土じゃないんだ?

理由は、以前引用させて頂いてますが。
お手数ですが、下記ページを高麗で検索してください。

コリアV.S.大日本帝国
http://konn.seesaa.net/article/6969983.html

>名前もモンゴル風に創氏改名していたのにな

国号と人名の改名の区別はしたほうが良いと思います。
Posted by こん at 2006年01月06日 23:30
いーじすさん

コメントありがとうございます。
Posted by こん at 2006年01月06日 23:42
あのころはいい時代じゃった…
もともと、キリスト教徒とイスラム教徒は仲が悪くはなかったんじゃよ。

ちと、このへんの認識が間違っているような気がしますね。分かっててワザと「はしょった」ようには読めないので。

オブラートに包んだような書き方ですが…(^^ゞ

大航海時代絡みの話は、民族自決など、様々な考え方の根本を構成するので慎重に書いた方がいいでしょう。
Posted by metola at 2006年01月08日 22:16
metolaさん、こんにちは。

>ちと、このへんの認識が間違っているような気がしますね。分かっててワザと「はしょった」ようには読めないので。

具体的にどういうことでしょうか?歴史嫌いだった私にはピンときませんでしたので、もう少しヒントが欲しかったです。ソースなどがありましたら勉強せてもらいます。

>大航海時代絡みの話は、民族自決など、様々な考え方の根本を構成するので慎重に書いた方がいいでしょう。

大航海時代に限らずいつの時代も戦争絡みのことは、難しいですね。唯一絶対の正義などはなく、それぞれの国に正義があるので。そのため極力どちらが正しいとは触れないようにしてます。その代り、その歴史から現在に生かせる何かを自分の頭で考えられる材料を盛り込みたいと思ってます。その際、歴史上の重大なイベントが抜けて、記事のストーリが大きく間違っている場合、ご指摘いただければ助かります。
Posted by こん at 2006年01月11日 14:55
イスラム勢力とがっつり組んで貿易していたのは、イタリア諸都市の商人ですよね。特にヴェネチア。
他にも海賊の横行もありましたね。地中海はスペイン、ポルトガルにとっては安全ではなかったのです。
しかし、大雑把に言って、新興ヨーロッパ勢力ごときがイスラムが支配する東洋の市場に打って出るような事は簡単にはいかなかたっということでしょう。
そうしたジレンマが、大航海時代を生むことになったのだと思います。
Posted by 蠅皇子 at 2006年04月13日 19:41
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